1 | スピルバーグの「レディ・プレイヤー」(観光編) |
「レデイ・プレイヤー1」というネットワークで繋がれた広大な仮想現実(VR)世界を舞台にしたSF映画があります。「メタバース」と呼ばれるバーチャル空間では既に人々が様々な活動を行い、仮想現実の世界が実現する未来もそう遠くないかもしれないません。 PCやスマホさえあれば、いつでもとこでもメタバースで観光ができます。飛行機や電車にも乗らず、人ごみに悩まされたり、渋滞でイライラすることも無縁です。メタバースで横浜市を疑似体験していただき、魅力を感じてもらうことができれば、実際にその魅力を体験したくなってしまうはずです。つまりメタバースは実際の旅行需要喚起してくれるのです。 コロナ禍で人の移動が制限されるなか、自民党青年局によるメタバース演説会が開かれ、1,000人以上の方が参加され、大いに注目を集めました。今後、横浜市の抱えている諸課題を解決する手段の一つとして、非常に魅力的だと感じています。実際、すでに多くの自治体が取り組みを始めています。大阪府が大阪万博に向けて提供を開始した「バーチャル大阪」、さいたま市のPR活動、香川県高松市は7月開催予定のG7サミットに、子どもを対象としてメタバース上で未来の都市を作るコンテストを開催しますし、2027年に横浜市で開催予定の国際園芸博覧会での効果的な活用も検討されています。 メタバースの認知度はまだまだ低いと思いますが、世界中ではメタバースの商業圏の争奪戦が始まっており、日本がスマホやEV車のイノベーションで遅れをとったように、気が付けば米国の事業者や中国の事業者にその商圏を寡占状態にされることになりかねません。 横浜市には河や公園や港といった豊かな環境があります。プロスポーツチームを複数抱え、音楽イベントが多数開催され、美術館や博物館といった文化施設も豊富に抱えるなど、日本でも有数の観光資源を有していることはいうまでもありません。官民で協力して横浜ならではの先進的なメタバースのプラットホームを整備して欲しいので、日本デジタル空間経済連盟を紹介し横浜市に加入してもらいました。将来は連盟会員の協力を得て、観光集客、自治体サービスのデジタル化、様々な分野でメタバースを利用する自治体の先駆者になって欲しいと考えています。私がメタバースを利用して横浜の観光集客活性化構想を問いましたが、これ以外のメタバースの有効利用の発想もありますので、ご興味のある方は私のホームページでご覧ください。 |
2 | 書かない・待たせない・行かない(行政サービス編) |
前回、メタバースと呼ばれる仮想空間を活用した横浜観光への応用について書かせていただきました。メタバースが切り拓く可能性はもちろん観光だけにとどまりません。メタバースは現実空間を代替するだけでなく、スマホやPCなどのデジタル機器によって、物理的距離・時間的制約の壁を越えたコミュニケーションを実現できることが最大の特長です。現在、横浜市では「横浜DX戦略」を策定し、デジタルの恩恵をすべての市民、地域に行きわたらせ、魅力あふれる都市を作ることを目指していますが、まさにこの文脈の中でメタバースを活用することで、より一層市民の方々にとって使いやすい行政サービスを実現することが可能になっていくはずです。 メタバース空間上に役所の窓口を開くことの最大のメリットは「いつもの役所と同じ見た目が再現されている」ことです。この「見た目」の部分が従来のオンラインサービスとの決定的な違いであり、初めてでも「見慣れた景色」を基に窓口を探すことができるのではないでしょうか。もちろん実際の場と同じように、メタバース上でも気軽にその場で職員に質問することもできます。これにより、遠方に住んでいる方、外出が困難な方、もしくは天気が悪く外出したくない気分の時でも、これまでと同等の行政サービスを受けることができるようになります。事前に混雑状況もわかりますので空いている時間に利用することや、また仮に混雑で待たされたとしても家で他の用事をすることが可能となり、時間の有効活用が可能となります。 また現在横浜市では、より深く市民の方々の声を集めるべく、様々な施策を検討しております。その1つとしてもメタバースを大いに活用するべきです。メタバース上で開催することができれば平日は忙しい方でも参加しやすくなるのではないでしょうか。また実際に参加することと比べ、アバターと匿名で参加できることも参加のハードルを下げられる可能性があります。 このように、メタバースの活用は観光だけにとどまらず、様々な分野で活用が可能です。次回は医療分野への応用について、こちらもメタバースを活用することで横浜市の抱える課題の解決につながると感じておりますので、思うところをまとめさせていただこうと思っております。 |
3 | 子育てしたいまちを作ろう(医療編) |
横浜市を観光面で盛り上げるにも、市民の皆様にとってより便利な区役所サービスを提供するにも、メタバースと呼ばれる仮想空間を活用することが有意義であることを、これまで2回に渡って述べさせていただきました。しかし実はまだメタバースを活用できる領域はいくつもあります。そこで今回取り上げてみたいのが「育児・医療」におけるメタバースの活用です。 2022年12月に本会議で承認された横浜市中期計画では、「子育てしたいまち」という基本戦略を掲げました。ここにメタバースを活用することでさらに施策の効果を高め、より魅力的なまちづくりに貢献するものと考えています。例えば親同士でコミュニケーションをとれる場をメタバース上で作れば、子育てに追われる中でも同じ悩みを持った方々と繋がりながら相談したり、助け合ったりすることが可能になります。また、子どもが生まれるまで、そして生まれてからしなければならないことをメタバース上で実際に疑似体験してみることも可能です。そうすることでお母さんの不安を取り除くこともできますし、お父さんがお母さんの苦労を知っておくことで出産や育児に対する理解も深まり、家族としての一体感も高まるのではないでしょうか。もちろんメタバースの活用は子育てに限らず、例えば現実同様にリハビリが可能なコンテンツを作ることで高齢者サポート等も可能です。 なお医療分野におけるメタバースの活用は既に産業レベルではかなり技術が進展しており、外国人向けに最先端医療を提供することで「医療ツーリズム」という文脈で観光にも活用できることも見逃せません。横浜は言うまでもなく日本でも随一の豊富な観光資源と、世界中の食事の提供と、さらには豊富な文化施設も備えており、海外からのアクセスも抜群です。滞在型の最先端の医療拠点を作ることは横浜市民にとっても大きなプラスになりますし、併せてメタバース空間を活用することによる医療面と他の面との相乗効果は計り知れないものがあるでしょう。 子育てに対する不安を取り除き、充実した医療サービスで、いかに安心した保育や子育てができるまちにしていくか、これからも引き続き知恵を絞ってまいります。 |
4 | メタバース活用で横浜を元気に(NFT編) |
これまで3回に渡ってメタバースの応用事例をまとめてきましたが、最後に最先端の事例として、日本政府でも推進に力を入れているWeb3(ウェブスリー)の活用についても私見を述べさせていただければと思います。 皆さまはNFT(代替不可能なデジタルデータ)をご存じでしょうか。例えば、ピカソの絵画をオークションにかける場合、それが本物かどうか事前に確認しますし、来歴等もきちんと管理されています。絵画のようなリアルな物の場合はこのような対応が可能なわけですが、これがデジタルデータだったとしたらどうでしょう? パソコンで作った画像や写真は簡単にコピーして他人に送れてしまうので、「どれが本物か」を証明するのは非常に難しいとされてきました。しかし最近の技術の進展により、デジタルデータであっても「本物か否か」をきちんと管理することができるようになったのです。この技術によって価値が出てきたのがいわゆる「NFTアート」と呼ばれる分野です。 例えば新潟県長岡市の山古志地域では、デジタル上での人口を増やす試みとして村の電子住民票を付与したNFTアートの発行と、山古志メタバースをつくる取り組みを行っています。村の特産である錦鯉をモチーフにしたNFT保有者は、村のデジタル村民として地域活性化のプロジェクトへの出席やデジタル村民選挙での投票ができるようになり、村外で生活しながらも村の振興プロジェクトやガバナンスに参加することができるのです。併せて山古志メタバースも展開しており、デジタル村民のためのイベントを定期開催することでリアル村民とデジタル村民の交流機会を積極的に創出しています。また、このNFTアートの概念を活用することができれば、障がい者をはじめ、若きアーティスト達のアート作品を収益化することができるかもしれません。 メタバースを活用することは横浜市の抱える多くの課題に対する解決策の1つの手段でしかありませんが、それにより関係人口の創出や雇用の創出に加え、関連ベンチャー企業の横浜市への参入等も考えると、まちづくりにとってのメリットは少なくなさそうです。文化財の豊富な横浜市にとってはこれらのデジタルアーカイブという意味でも有意義な取り組みになるでしょう。いずれにせよ、リアル・バーチャル問わず、地域や国の壁を越えて、横浜の魅力を全世界に発信していくことで、さらに横浜を元気にしていき、これからも皆さまからの貴重なご意見を伺わせていただき、市政に反映していければと思っております。 |